Ȋ֘AgsbNX

記事№22 1つの歯胚から複数の歯胚を発生させる歯胚分割技術を開発

ずいぶんとサボっていたので、久しぶりのトピックス
更新ですが、面白い研究成果の発表がありましたので
ご紹介します。

(少し難しいかもしれませんがお許しを。)

理化学研究所と東京医科歯科大学の研究グループは、
2015年12月24日、マウスをモデルにした研究で、
歯のもととなる原基(歯胚)の分割操作を行う
ことにより、ひとつの歯胚から複数の歯胚を発生
させる「歯胚分割技術」を開発したという発表です。

英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に、
同年12月17日付けで掲載されたとしています。

(以下発表資料より引用) 

歯の喪失に対する治療として、入れ歯やブリッジ、
インプラントといった人工物による代替治療が行われ、
咀嚼(そしゃく)機能を回復する有効な医療技術
として確立しています。

しかし、これらの治療法だけでは、歯の生理的機能を
完全に回復することが難しいため、より生物学的な
機能を付加し、周囲の組織と連携して機能する
「歯科再生治療」の開発が期待されています。

現在行われている歯科再生治療として、自身の機能
していない歯を歯の欠損部に移植し、歯の生理機能を
回復する自家歯牙(しが)移植や幼弱な発生段階の
自家歯胚を移植し、歯を発生させる歯胚移植治療
(図1)が行われています。

図1

これらの治療法は、有用な歯科再生治療として注目
されていますが、1つの個体が持つ移植可能な歯や
歯胚には限りがあるため、歯胚の数を増やす技術の
開発が望まれていました。

共同研究グループは、歯胚の分割操作を行うことにより、
1つの歯胚から複数の歯胚を発生させる歯胚分割技術を
開発しました。

この技術を用いて実験を行ったところ、複数の歯胚が
正常に発生し、天然の歯と同等の構造を持った歯が
再生されました。

歯の再生では、分割歯胚が天然歯胚と同等の組織構造を
持つだけでなく、口腔内に移植したときに、レシピエント
(移植を受ける個体)の顎骨と正常に生着し、さらに
周囲組織と連携し機能することが重要です。

そこで、マウスの口腔内に分割歯胚を移植し、歯の
発生過程をマイクロCTで観察しました。その結果、
移植約2か月後には反対側の歯と咬合し、機能している
ことが示されました。(図7)

図7

これら再生歯は、矯正力(歯列矯正の際に加える力)を
加えることによって、骨リモデリングを介した歯の
移動が可能で、また、中枢に伝達して痛みなども
感知する神経機能を持っており、機能的にも天然歯と
同等でした。

今回の技術を発展させ、ヒトへ応用することができれば、
現在の自家歯牙移植や歯胚移植治療の課題である
移植数の問題を解決できるかもしれません。

また、歯胚分割技術は、歯胚だけでなく、その他の
器官に対しても適用できる可能性があるため、新たな
再生移植医療の技術開発へつながると期待できます。

(引用ここまで) 

簡単にまとめると、今までは1つの歯の元の細胞
である歯胚は分割できず、1つのままだったものが
複数分割できる「歯胚分割技術」なる方法が開発され、
それによってできた歯胚も通常の再生過程をとる
ことが確認され、機能的にも天然歯と同等なものが
できたと言うことです。

今回このような新たな技術が開発され、臨床応用に
近い歯科再生療法へと発展することが期待でき、
先天的、後天的に歯を喪失している患者への光明と
なりそうですね。将来が楽しみです。

  • 予約、お問い合わせは0257-21-4151 診療予約