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記事№14 肝炎と歯科治療について

今回は肝炎と歯科治療について書いてみようと思います。

肝炎とはどのようなものか?

肝炎とは「肝臓に炎症が起きている状態」、すなわち肝臓の細胞が破壊されて
いる状態を指します。原因別に、以下のような種類に分けられます。
1. ウイルス性肝炎
肝炎ウイルスによる

2.薬剤性肝炎
薬物や毒物、化学物質による

3. アルコール性肝炎
アルコールによる

4. 自己免疫性肝炎
異物を攻撃するための免疫系が、自分自身を攻撃してしまうことによる。
日本では、肝炎の多くが1.ウイルス性肝炎だと言われています。

このうち感染性のない(うつらない)肝炎は、アルコールや薬剤が直接肝細胞
にダメージを与えたり、薬剤のアレルギーが関与して起こるアルコール性肝炎、
あるいは自分の肝細胞に対する免疫の破綻によって引き起こされる自己免疫性肝炎
がそれにあたります。

ウイルス性肝炎とはどのようなものか?

ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスに感染して、肝臓の細胞が壊れていく病気
です。本来肝臓は再生能力が高く、例えば手術でその半分以上を切り取っても
元の大きさまで再生できるほど丈夫な臓器ですが、この病気になると徐々に
肝臓の機能が失われていき、ついには肝硬変や肝がんといった、再生すらも
不可能な病気に進行してしまいます。

主な肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型の5種類があります。詳しい
症状とそれを起こしやすい肝炎ウイルスの型は以下の通りです。

1. 慢性肝炎:
B型、C型肝炎ウイルスによるものが多い。長期間にわたり軽度の肝障害が続く。
徐々に肝臓が繊維化し、肝硬変や肝がんに至ることがある。

2. 急性肝炎:
A型、B型、E型肝炎ウイルスによるものが多い。急速に肝細胞が破壊されるために、
発熱、全身倦怠感、黄疸などの症状があるが、自然経過で治癒することが多い。

3. 劇症肝炎:
急性肝炎のうち、発症から8週間以内に高度の肝機能障害を起こし、脳症などを来す
もの。集中的な医学管理を要する。生存率は30%ほど。

なかでもB型及びC型肝炎ウイルスの患者・感染者は合わせて300万人を超えて
おり、国内最大の感染症とも言われています

歯科治療上の問題点

1)歯科治療時の注意

歯科治療を行う際には,患者が肝疾患に罹患している可能性があると考え,患者から
得られた病歴,身体所見および血液検査所見などから肝疾患の有無について総合的
に判断する習慣をつけることが大切です。

歯科診療上で特に注意が必要な肝疾患および合併症として以下のものを挙げることが
できます。

① B 型・C 型肝炎の感染対策

初診時の問診の際には,各患者から肝疾患に関連する医療機関への受診歴がないか
を聞き取り,現在あるいは過去に受診歴がある場合には,ウイルス肝炎の有無および
その重症度についての詳細な情報を受診医療機関から得ることが大切です。

さらに肝疾患の受診歴がない場合でも,輸血や血液製剤使用の既往歴,入れ墨,健康
診断での肝機能障害の指摘など肝炎ウイルス感染の可能性がある患者に対して
は,治療前に血液検査を行い肝炎ウイルス感染の有無を確認することが必要です。

感染予防対策の基本は,血液の付着した注射針などによる針刺し事故を起こさないこと
ですが,誤って針を刺してしまった場合には,直ちに流水で患部を十分に洗浄することが
重要です。

B 型肝炎ウイルスは感染力が強いため,血液に触れる機会の多い医療従事者は予めHB
ワクチンを接種し,感染防御に有効な抗体価を獲得することが強く勧められます。

針刺し事故の発生時に汚染源患者のHBs 抗原が陽性でかつ被汚染者のHBs抗体が陰性
であることが判明した場合には,被汚染者には速やかにHBs 抗体含有ヒト免疫グロブリン
(HBIG)の投与することによりウイルス感染を阻止するための治療を行います

②肝硬変に伴う出血傾向

肝硬変患者では,肝での凝固因子の産生能の低下,脾腫に起因する血小板減少により
出血傾向がしばしば認められます。肝硬変患者に対して抜歯などの観血的治療が必要な
際には,治療前に血小板数,プロトロンビン時間PT の測定を行い,出血傾向の程度を
あらかじめ確認するとともに止血対策を立てておくことが重要です。

肝硬変患者の抜歯に際しては,血小板数が10万以上であれば通常の治療で問題はない
と考えられ,3万以上であれば歯科的圧迫止血や縫合処置などにより抜歯は可能であると
思われます。

血小板数が3万以下の場合には,抜歯の適応について再検討すべきで,抜歯以外の治療
がないと判断された場合には,入院の上で治療を行うことが望ましく,血小板輸血も考慮
する必要があります。

③薬剤性肝障害

あらゆる薬剤が肝機能障害の原因となり,稀ではありますが劇症肝炎の原因にもなるので,
処方の際には十分な注意が必要です。

薬剤性肝障害の起因薬としては,歯科の日常診療でも多く使われている抗生剤やNSAIDs
(非ステロイド性抗炎症薬)の割合が多いですが,近年の特徴として健康食品や民間薬
による肝障害が増加しており念頭に置く必要があります。

2)使用器具の感染対策

オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)でB型C型肝炎ウイルス (HBV HCV) は死滅します。
15分間の煮沸 (100℃) や121℃ (2気圧) 5分間の高圧滅菌をすると感染することはあり
ません。 耐熱性のある器具はすべてこの方法を用います。
132℃2気圧の蒸気で滅菌することにより、肝炎ウイルスはもちろん、ほとんど全ての微生物
は死滅します。

歯科の器具は耐熱性のないものもあります。こうした器具は薬液に漬けて消毒を行ないます。
また使い捨ての器具にして、廃棄してしてしまうという方法もあります。
ライトのハンドルや、スイッチ類も薬液で拭掃。ラップでくるんで使用後にとりはずすという方法
もあります。アルコール消毒では、肝炎ウィルスには効果がありません。

当医院では、器具は同種のものを使い、滅菌だけは肝炎患者に使用したものは別にして、
ウィルス死滅に有効な薬液消毒を施した上にオートクレーブにかけて滅菌しています

耐熱性のないものはグルタールアルデヒド製剤などウィルス死滅に有効な薬液に漬けること
により滅菌消毒を施しています。

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少し難しかったかもしれませんね。いずれにせよ、ウィルス性肝炎など感染症の患者さん
への歯科治療に関しては十分注意を心掛けており、医療従事者側が誤って感染しないこと、
また、患者さんから患者さんへの感染が起こらないことを念頭に滅菌消毒を行っております。

院内感染を防ぐためにも、ウィルス性肝炎の既往のある患者さんは、問診の際にはその旨
お伝えいただくことが有効になりますのでご協力をお願い致します。

  • 予約、お問い合わせは0257-21-4151 診療予約