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記事№11 歯科と放射線被ばくについて

現在 東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発のニュースが大きく報道
されています。特に関心の多い事柄は、原発から周囲へ漏出されていると思わ
れる、放射性物質とそれが出す、放射線量ではないかと思われます。

そこで、今回は歯科治療と放射線の被曝について簡単に解説しておきます。
テレビ等では、放射線による影響を表す単位としてミリ シーベルトとかマイクロ
シーベルトという言葉をよく聞きますね。マイクロはミリの千分の1です。

「100ミリ シーベルトを超えると人体に影響がある」ということがよく報道されて
いるので、ご記憶されている方も多いと思います。

また、3/19の会見で枝野官房長官が、「福島県で採取された原乳と茨城県
で採取されたホウレンソウ から微量の放射線量が検出された。」
「しかし、これらは ただちに人体に影響があるレベルではない。」と発表しました。

そして、「今回の検出と同量の放射性物質のホウレンソウ と 牛乳 を1年間とった
場合の被ばく線量に関し、牛乳がCTスキャン1回分、ホウレンソウが5分の1程
度」と報道されました。

このような話しを聞くと、「CT撮影はそんなに多量の被ばくするものなのか?」
「病院や歯科で撮影するレントゲンは大丈夫なの?」と考えられる方も当然
いらっしゃるかもしれませんね。

結論から申し上げますと、歯科医院で行うレントゲン撮影による人体への影響は
非常に微量ですのでまったく心配されることはありません。
御安心ください。

しかし、何事でもそうですが、医療という行為でも本来100%安全であるという事
はありえません。これを大前提としてお考え下さい。必ずリスクは存在します。

例えば100%安全な薬というものはありえません。抗生剤(抗生物質)を例にとっ
て考えてみるとわかりやすいかもしれません。私ども医師や歯科医師が大学の
講義で習う抗生剤の話として、必ず副作用ということも学習します。

抗生剤の副作用は人体のさまざまな部位であらわれます。また、アレルギー反応
を起こすこともあります。現在持病を抱えている場合、抗生剤の種類が限定される
こともありますし、現在服用されている他の薬との相互作用もあります。

歯科医院でよくある抜歯後や腫れた時に服用する抗生剤で問題が起きたという
事例もあります。しかし、だからといって抗生剤はダメ使用すべきではないという
ことにはなりません。

医療行為の原則として、「リスクより有益性の方が高い場合に行う」
ということがあります。すなわち、抗生剤は栄養となるものではないので、服用して
人体に良いものではないが、服用しないと感染を起こしたり、症状が悪化する事が
十分予測されると判断した場合に使用するというものです。

「抗生剤を服用しないとさらに病状が悪化し、人体に悪影響を及ぼす可能性が高
いため、抗生剤を服用する。」これが、抗生剤を使用する理由となります。

レントゲン(X線)の場合も同じです。どのような小さなレントゲンでも放射線による
影響はあります。もちろんその量は微量なのですけれど。

しかし、レントゲン撮影を行わないと診断できない病気があるのも事実です。
虫歯であっても肉眼で分かる範囲は限られてきます。その虫歯は神経まで近い
ものなのか? 虫歯の位置、大きさは?見た目では分からないが、本当に虫歯
になっているのか?また、歯周病の進行の程度は?歯の根は折れていない
のか?等、 肉眼では分からない事がレントゲン撮影を行うことにより分かりやすく
なる場合が多いのです。

虫歯かどうか正確に分からない状態でいきなり歯を削った場合で、結果的に虫歯
ではなかった場合には、当然不利益となります。これをレントゲン撮影を行うことに
より正確な診断を下すことが可能となるのです。有益性の方が高いということです。

先程も述べましたように「リスクより有益性の方が高いと判断した場合に行う」
これが医療行為の基本なのです。ご理解いただけましたか?

以下は医療で行うレントゲン撮影において部位別に受ける放射線量です。
これを見ても歯科治療で使用するレントゲンの影響がいかに少ないかがお分り
になると思います。

すなわち、歯科のパノラマ写真という大きなお口全体の写真でも(0.03としても)
230枚撮影してはじめてCTスキャン1枚分に相当することになります。小さな歯科
用デンタル写真でも(0.02として)345枚ということになります。防護用エプロンを
付けたり、デジタル撮影をする事によりさらに少ない被ばく量になります。

放射線量のおおよその目安(単位:mSv=ミリシーベルト)

歯科(口内法エックス線撮影、小さなレントゲン写真) 0.01~0.02

・歯科(パノラマエックス線撮影法、大きなレントゲン写真) 0.02~0.03

・CT撮影(頭部) 0.49

・CT撮影(胸部) 6.9  (→ ※枝野長官が言っていたものにあたります) 

・集団検診での胃のレントゲン写真 4.1

・胃のレントゲン写真 2.7

・東京・ニューヨーク間を飛行機で往復したときの放射線量 0.2

・世界平均一人あたりの自然界から受ける放射線量 2.4

・日本人が1年間に自然界から受ける放射線量 1.4

・ガラパリ(ブラジル)の人が1年間に自然界から受ける放射線量 10

(独立行政法人・放射線医学総合研究所等の測定による。歯科はメーカーの測定による)

なお、放射線の人体への悪影響については、500mSvの放射線を一度に浴びた
場合に末梢血のリンパ球は減少し、1000mSvの放射線を一度に浴びると10%の人に嘔吐があります。そして一度に7000mSvの放射線を浴びると死に至るとされています
ので、これも覚えておかれると良いと思います。

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